マンションの駐車場に深夜、住民が普段見かけない車が止まっていた。中には、母親(46)と娘(20)、就学前の息子が乗っていた。
不審車との通報を受け、聞き取りに来た警察官に娘が言った。「母親と男に売春をさせられている」
それまで約2カ月の間、母娘は男から「毎日10万円」のノルマを課され、寝る間もない売春を続けていた。そんな生活がようやく終わった。今年2月12日、福岡県内での出来事だ。
福岡県警は今年6月、娘に売春を強要したとして母親と、その交際相手で会社員の男(42)を売春防止法違反(困惑等による売春)の疑いで逮捕。同罪に問われた2人の裁判が8月に始まった。
母親はなぜ、男に操られるように金を渡し続け、娘にまで売春を強いたのか。検察側の冒頭陳述や、被告人質問などをもとに事件の経緯をたどる。
初公判で、起訴内容について「だいたい合っています」と、うつむきながら小さな声で答えた母親。2013年ごろ、母親が自身で続けていた売春の客として知り合ったのが、今回の男だった。何度か連絡を取り合い、会っているうちに、交際関係にあると思い込まされた。
1日1万円→10万円 引き上げられたノルマ 男は「娘にも仕事させろ」
次第に、男から金に困っているなどと相談され、売春で得た金を男に渡すことが増えるようになった。別々に暮らしていたが、男がインターネットで注文した私物を着払いで受け取らされることもあった。
20年夏ごろ、男は母親に結…
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きょうも傍聴席にいます。
事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[もっと見る]
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル